他の相続人が遺産分割に非協力的な場合の対処法を弁護士が解説!
相続が発生すると、遺産の分け方について相続人全員で話し合う「遺産分割協議」が必要となります。
しかし、相続人の中には音信不通の方がいたり、自分の主張ばかりを繰り返したりと、話し合いに協力してくれない相続人もいます。このような状況に陥ると、遺産分割協議が進まなくなります。
この記事では、遺産分割に応じてもらえない場合の具体的なケースと、取るべき対処法を、弁護士が分かりやすく解説します。
よくある遺産分割に応じてもらえないケース
遺産分割に応じてもらえないケースは、以下のような状況が考えられます。
目次
他の相続人と連絡が取れない:音信不通
例えば・・・
父親の遺産相続で、長年海外で生活している兄と連絡が取れなくなってしまった。メールを送っても返信がなく、実家に電話しても誰も出ない。
祖父の遺産相続で、認知症を患って施設に入所している叔父が、遺産分割の内容を理解できず、意思疎通が困難な状態になっている。
他の相続人の存在を知らなかった:連絡先不明
例えば・・・
祖母の遺産相続で、遠い親戚が相続人になっていることが分かったが、昔からほとんど交流がなく、連絡先を知っている人が誰もいない。
不仲による協議の硬直
例えば・・・
昔から折り合いが悪く、冷静な話し合いができない。
非協力的な姿勢
例えば・・・
兄弟の一人が、「自分は親の面倒を一番見てきたから、他の兄弟よりも多く遺産をもらうのは当然だ」と主張し、法定相続分以上の遺産を要求して一切譲歩しない。
仕事が忙しいことを理由に、「遺産分割の話は後回しにしてくれ」と言って、いつまで経っても協議に応じようとしない相続人がいる。
遺産分割を放置するとどうなる?
相続関係の複雑化
遺産分割を行わないまま時間が経過すると、相続人の誰かが亡くなってしまうことがあります。
このような状況になることを「数次相続」といいます。
例えば、父親が亡くなり、遺産分割を行わないまま母親も亡くなった場合、父親の遺産と母親の遺産の両方を、子供たちが相続することになります。すると、相続人の数が増え、関係も複雑化してしまいます。当初は兄弟間だけで話し合えば済んだものが、甥や姪、さらにはその子供たちも関係してくることになり、遺産分割協議がまとまるのが非常に困難になります。
遺産の管理が困難になる
遺産分割が完了していない遺産は、相続人全員の共有状態となります。特に不動産の場合、共有状態が長期化すると、以下のような問題が生じます。
不動産の売却・活用が困難に
不動産を売却したり、賃貸に出したりするには、共有者全員の同意が必要です。意見がまとまらない場合、売却や活用ができず、無駄な固定資産税だけを払い続けることになります。
管理責任の不明確化
建物の修繕や管理費用を誰が負担するのか、責任の所在が曖昧になり、トラブルの原因となります。例えば、雨漏りが発生した場合、誰が修繕費用を負担するのかで揉める可能性があります。
共有者間の関係悪化
共有状態が長期化することで、共有者間の関係が悪化し、さらなるトラブルに発展する可能性があります。
相続税の問題
相続税の申告・納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
遺産分割が完了していない場合でも、この期限までに相続税の申告・納付を行う必要があります。
遺産分割が期限までにまとまらない場合、未分割の状態のまま法定相続分で分割したものとして申告・納税することになります。
その後、遺産分割が完了した際に、修正申告を行う必要が生じ、手続きが煩雑になります。また、期限までに申告・納付を行わない場合、延滞税や加算税といったペナルティが課される可能性があります。
さらに、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった、相続税の軽減措置を受けられなくなる場合もあります。
その他のリスク
上記以外にも、以下のようなリスクが考えられます。
相続人の高齢化
時間が経過するにつれて相続人も高齢になり、判断能力が低下する可能性があります。判断能力が低下してしまうと、遺産分割協議自体を行うことが困難になります。
資料の散逸
時間が経過するにつれて、遺産に関する資料(預金通帳、不動産の権利証など)が紛失してしまう可能性があります。資料がなくなってしまうと、遺産の把握や評価が困難になります。
遺産分割に応じてもらえない場合の具体的な対処法
このような状況に陥った場合、以下のステップで対処が考えられます。
内容証明郵便で意思表示を明確にする
内容証明郵便で遺産分割協議への参加を促す書面を送付することで、「協議に参加してください」という意思表示を明確に記録に残すことができます。これは、後々法的手段を取る際の証拠となります。
弁護士に相談・依頼する
弁護士に相談することで、法的なアドバイスを受けられるだけでなく、相手方との交渉を代理してもらうこともできます。弁護士が介入することで、相手も事の重大さを認識し、真剣に対応するようになることが多いです。
家庭裁判所の手続きを利用する
不在者財産管理人選任の申立て
行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加する人を選任してもらう手続きです。
遺産分割調停の申立て
家庭裁判所の調停委員の仲介の下で、相続人間で話し合いを行う手続きです。
遺産分割審判の申立て
調停で合意に至らなかった場合に、裁判所が遺産の分割方法を決定する手続きです。
弁護士に相談するメリット
法的なアドバイスで安心
個々の状況に合わせた適切なアドバイスを受けることができます。
相手との面倒な交渉を代行
感情的になりがちな相手との交渉を弁護士に任せることで、精神的な負担を軽減し、冷静に解決を目指せます。
煩雑な手続きもお任せ
調停や審判などの複雑な法的手続きや相続に関する調査を弁護士に代行してもらうことで、時間と労力を大幅に節約できます。
適正な遺産分割を実現
法的な観点から、それぞれの相続分を考慮した適正な遺産分割を実現することができます。
当事務所は遺産分割問題の解決に力を入れています
当事務所では、遺産分割問題に関する豊富な経験と実績を有しており、これまで多くの問題を解決に導いてきました。遺産分割に応じてもらえない、他の相続人と連絡が取れない、どのように手続きを進めれば良いか分からないなど、遺産分割に関するお悩みは、当事務所にご相談ください。