遺留分におけるよくあるトラブルと対処法について弁護士が解説!
遺留分は、遺言による相続分の指定や生前贈与などの事情で相続財産を受け取れない相続人が出てしまう場合に、最低限の取り分を保障する制度です。
しかし、遺留分を巡っては様々なトラブルが発生しやすく、相続問題の中でも特に複雑な分野と言えるでしょう。「遺言書の内容によってほとんど遺産がもらえなかった」「兄弟への生前贈与がたくさんあり、私の遺産が著しく少ない場合どうすればいいの?」「そもそも遺留分って何?だれがどのくらいもらえるの?」など、遺留分についてお悩みの方は少なくありません。
この記事では、遺留分とは何かという基本から、よくあるトラブル、具体的な対処法、そしてトラブルを未然に防ぐための予防法まで、弁護士が解説します。
遺留分とは?
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた、被相続人の相続財産のうち最低限保障されるべき取り分のことです。被相続人(亡くなった方)が遺言で自由に財産の分け方を指定できるとしても、一定の範囲の相続人には、法律によって最低限の取り分が保障されています。これが遺留分です。
遺留分が認められる相続人
配偶者、子、直系尊属(父母、祖父母など)。なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の割合
目次
直系尊属のみが相続人の場合
遺産の1/3
上記以外の場合
遺産の1/2
例えば、夫が亡くなり、妻と子供2人が相続人だったとします。夫の遺産が6000万円だった場合、遺留分の総額は6000万円 × 1/2 = 3000万円となります。妻と子供の遺留分は、さらに法定相続分(妻:1/2、子供:残り1/2を人数で等分)で按分されます。つまり、妻の遺留分は3000万円 × 1/2 = 1500万円、子供1人あたりの遺留分は3000万円 × 1/2 × 1/2 = 750万円となります。
遺留分におけるよくあるトラブル
遺言書の内容が偏っている
長男に全ての財産を相続させる遺言があった場合
夫が「全ての財産を長男に相続させる」という遺言書を残して亡くなりました。相続人として妻と息子が二人いるとすると、妻と次男は遺産を全く受け取れないことになります。その場合妻と次男は「遺言による遺留分の侵害がある」と主張が可能です。
生前贈与がされていた
生前に特定の子供に多額の贈与があった場合
父親は生前に長男に対して事業資金として多額の贈与を行っていたとします。父親の死後、遺産分割が行われた際に、他の相続人への相続分が少ない場合に「生前贈与によって遺留分を侵害している」と主張が可能です。
遺留分トラブルにおける対処法
遺留分が認められる相続人の遺留分が、遺言による相続分の指定や生前贈与によって、遺留分を計算した結果、法定の遺留分を下回る場合に、遺留分侵害となります。遺留分の侵害があったと認められた場合には、以下の措置をとることができます。
遺留分侵害額請求権の行使
遺留分を侵害された相続人が、遺留分侵害額請求権を行使することで、遺留分を侵害されている額の返還を求めることができます。
この請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年以内、または相続開始時から10年以内に行使する必要があります。
遺留分侵害請求を行使する場合
遺留分侵害額の確認
まずは、正確な遺留分を計算し、侵害されているかどうか、侵害されている場合はいくらなのかを確定します。
相手方との交渉
相手方と交渉し、遺留分侵害額の支払いを求めます。
遺留分侵害額請求訴訟の提起
交渉が決裂した場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を提起します。
調停の利用
訴訟に至る前に、家庭裁判所の調停を利用することも有効です。調停委員の仲介の下、当事者間の合意を目指します。
遺留分請求をされた時はどうすればいい?
遺留分侵害額請求を受けた場合、どのように対応すれば良いのか、段階を追って詳しく解説します。大切なのは、冷静に対応し、適切な法的措置を取ることです。もし請求をかけられたとき、そのまま放置してしまうと、不利な状況に追い込まれる可能性があるので、注意が必要です。
まずは請求の内容をよく確認する
相手方から遺留分侵害額請求を受けた場合、まず誰から請求されているのか、いくら請求されているのかなど請求の内容をよく確認しましょう。
遺留分侵害額が正しいか確認する
遺留分の計算は複雑で、遺産の評価方法や特別受益(生前贈与など)の考慮など、専門的な知識が必要となり、ご自身で計算するには難しいため、弁護士に相談することを推奨します。
時効を確認する
遺留分侵害額請求権には時効があります。遺留分侵害額請求権は消滅します。請求を受けた時点で、上記の時効期間が経過している場合は、時効を主張することで請求を拒否することができます。
相手方と交渉する
遺留分侵害が請求された時、原則現金での返還となります。
そのため、遺言によってすべての財産を相続することになったが、財産のほとんどが不動産で現金がない場合なども現金での返還となります。この場合、現金がないから遺留分侵害なんてないと主張する相手方もいます。その場合には、現金返還が原則であることを説明して相手方と交渉する必要があります。
家庭裁判所の手続きを利用する
相手方との交渉がまとまらない場合は、調停や訴訟による家庭裁判所の手続きを利用することになります。
※遺留分侵害請求を受けた時は絶対に放置しない
冒頭でも述べましたが、遺留分侵害額請求を受けた場合、絶対に放置してはいけません。放置してしまうと、相手方の主張が一方的に認められ、不利な状況に追い込まれる可能性があります。
弁護士に相談するメリット
正確な遺留分額の算出
遺留分の計算は、遺産の範囲の確定、特別受益(生前贈与など)の考慮、遺産の評価など、複雑な要素が絡み合います。ご自身で正確に計算するのは困難な場合が多いです。弁護士に依頼すれば、これらの複雑な計算を正確に行ってもらえます。
適切な法的アドバイス
遺留分に関する法的な問題は多岐に渡ります。例えば、遺留分額の確認や遺留分侵害の有無等、ご自身で判断するには難しいことも多く、弁護士に依頼することで、個々の状況に応じた最適なアドバイスを受けることができます。
相手方との交渉の代理
相手方との交渉は、感情的な対立を生みやすく、当事者同士で行うとこじれてしまうケースも少なくありません。弁護士に交渉を依頼することで、精神的な負担も軽減され、冷静かつ円滑に交渉を進めることができます。
裁判所の手続きの代理
交渉が決裂した場合、家庭裁判所での調停や訴訟などの手続きが必要となります。これらの手続きは複雑で、多くの時間と労力を要します。弁護士に依頼することで、これらの手続きを全て代理してもらうことができます。
相続財産の調査
遺留分を計算するためには、相続財産の全体像を把握する必要があります。しかし、相続財産を調査するための必要書類の収集や手続きは煩雑です。弁護士に依頼することでこれらの手続きを弁護士に任せることができます。
時効の管理
遺留分侵害額請求権には時効があります。弁護士に依頼することで、時効管理を適切に行ってもらえます。時効が成立してしまうと、遺留分を請求する権利を失ってしまうため、弁護士による時効管理は非常に重要な役割を果たします。
遺留分トラブルに関するお悩みは当事務所にご相談ください!
当事務所では、遺留分に関する様々なトラブルに対応しております。法的なアドバイスとともに遺留分侵害額請求に関する交渉・訴訟対応まで、幅広くサポートいたします。遺留分に関するお悩みは、お気軽にご相談ください。